研究課題
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は骨粗鬆症の危険因子である。COPDに伴う骨格筋障害には様々な病態が存在するため、基礎研究による機序解明が今後の課題である。先行研究においてエラスターゼ(PPE)誘導性COPDマウスでは海綿骨の骨量減少が生じており、誘導された肺病変に伴う内因性酸化ストレスがその表現型に関与していると考えた。本モデル動物を用いてCOPDと酸化ストレスと骨量減少の関連を調査した。また、COPD急性増悪の既往がある患者では骨密度が低値であることが知られており、COPDマウスに急性炎症を惹起させた時の骨への影響も検討した。C57BL/6J雄マウス12週齢に生理食塩水(Control群)またはPPE 0.1U(PPE群)を気管内投与した。投与後0、1、2、3、4、8、12週時点の尿中8-OHdGも測定した。12週時点でμCTで肺を撮影し、%LAA (law attenuation area) で肺気腫を評価した。屠殺の3日前と7日前にカルセイン20mg/kgを皮下注射して石灰化面を標識し、屠殺後には椎体や下肢骨の二次海綿骨領域で骨形態計測を行った。%LAAはPPE群で有意に高値であり、PPE投与後12週時点でPPE群の尿中8-OHdGが高値を示した。PPE群の海綿骨量は減少し、骨形成指標が低値を示した。更に、COPDマウスにリポ多糖(LPS)を気管内投与することによりCOPD急性増悪様の急性炎症を肺に惹起させたところ、海綿骨量は更に減少し、成熟破骨細胞への分化亢進を示唆する骨代謝動態を示した。PPE誘導性COPDマウスでは、酸化ストレスの上昇に伴い、海綿骨量が減少しており、COPDマウスにおける酸化ストレスと骨量減少の関連が示唆された。また、COPDマウスの骨では、骨形成障害による低代謝回転を示すが、肺に急性炎症を惹起することで骨代謝動態が変化することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
予定していた検証事項を確実に実施している。もう少し検証を進めていけば、本年度中に論文投稿が可能である。
おおむね順調に研究が進展しているため、当初の計画通りに研究を進めていく。他の検証実験を行いつつ、学会発表や論文による研究成果の報告をする予定である。また、新型コロナウイルス流行に伴い、動物研究センターが閉鎖された場合、研究が大幅に遅れる可能性がある。以下の対策を講じて、感染拡大予防に努めていく。1) 体調不良者はセンターへ入館しない。2) 中止や延期が可能な研究については見送る。3) 入退館する際にはなるべく少人数とする。4) センター入退館時、動 物飼育室入退室時に必ず消毒用アルコールで手指消毒を行う。5) 動物飼育室に入室する際には、マスク、帽子、手袋を着用する。6) 動物飼育室の入室は1名と し、飼育員や他の実験者がいる場合には、入室しない。7) 繁殖する動物数を必要最低限とする。
購入予定だった試薬が安価だったため残額が生じた。来年度に試薬購入費として使用する予定である。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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