研究課題
慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の骨折治癒への影響は不明であり、基礎研究による機序解明が必要である。COPDの病態には、酸化ストレスに対する防御機構であるNrf2シグナル伝達経路の障害が関与している可能性が示唆されている。我々は、COPDマウスにドリル孔を作成し、その皮質骨修復過程をNrf2に着目し調査した。12週齢雄C57BL/6Jマウスに生理食塩水(C群)またはPPE 0.1U(P群)を気管内投与し、投与後12週で、大腿骨前面に径1.0mmのドリル孔を作成した。Day 14で屠殺し、ドリル開孔部の新生骨部の骨形態計測と、免疫染色で同部のNrf2、NQO-1の発現量を評価した。またドリル孔作成後day 0、3でドリル開孔部の組織を含めた骨髄細胞を採取し、RT-PCRで遺伝子学的評価を行った。ドリル開孔部の組織を含めた骨髄細胞のRT-PCRでは、day 0に対しday 3で、C群におけるNrf2のmRNA発現が有意に上昇する一方で、P群におけるNrf2の有意な発現上昇はなく、day 3において、Nrf2、Nqo1、Vegfa、Hif1αのmRNA発現量がC群に比べP群で有意に低かった。day 14のドリル開孔部新生骨の骨形態計測では、P群の骨量(BV/TV)、骨芽細胞面(Ob.S/BS)、骨芽細胞数(Ob.N/BS)がC群と比較し有意に低かった。免疫染色では、C群と比較してP群ではNrf2、NQO1、VEGFaいずれのタンパク発現量も低下していた。COPDマウスでは骨形成低下による皮質骨修復遅延が生じており、その機序にNrf2シグナル伝達経路の障害が関与することが示唆された。今後、Nrf2シグナル伝達の鍵となるNrf2タンパクの核内移行の評価やNrf2賦活剤の投与によって更なる調査を行う予定である。
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