研究実績の概要 |
マクロファージが骨芽細胞による骨形成を支持することが示唆されているが、その分子メカニズムについては不明である。本研究では、そのメカニズムを解明する過程でマクロファージの培養上清から、骨髄間質細胞株ST2の走化性を刺激する分子としてEmilin2を分離・同定することに成功した。マクロファージにIL-4を添加するとEmilin2 mRNA発現が上昇した。すなわち、組織修復型マクロファージでEmilin2発現が高いことが示唆された。抗Emilin2抗体を用いた骨組織の免疫組織染色では、Emilin2は骨芽細胞表面のキャノピー状の細胞で検出された。マクロファージマーカーであるF4/80との二重染色ではEmilin2を発現する細胞ではF4/80も検出されたことから、osteomacと呼ばれる骨組織常在型マクロファージがEmilin2を産生・分泌することで骨代謝を制御している可能性が示唆された。また、骨折モデルでは、Emilin2発現が一過性に上昇することを確認した。マクロファージを除去するクロドロネートリポソームの投与によって、Emiin2発現が低下したことから、骨折の修復時にマクロファージがEmilin2を発現し、骨折の治癒過程を制御することが示唆された。RNA-seq解析によって、Emilin2以外にもマクロファージ由来の骨折治癒促進因子として、uPA, TGF beta 1, TGFBIを同定した。
|