研究実績の概要 |
損傷脊髄の機能回復に関わる因子を網羅的に解析するため、以前我々は脊髄損傷後にトレッドミルで歩行訓練を行い、歩行訓練17日目の腰髄のRNA-Seqを行った。その結果、トレーニング群の腰髄では、非トレーニング群に比べて36種類ものシナプス関連遺伝子の発現が増加しており、その中でも興奮性シナプスの発生・新規構築に重要な ポストシナプス蛋白のNGL-2陽性のシナプスが増加している事が明らかになった。今回はこのトレーニングに脊髄電気刺激を併用した効果を調査するため、脊髄半切4日後から腰髄電気刺激療法のみ行う群、腰髄電気刺激と歩行トレーニングを併用する群を作成し、腰髄電気刺激療法の遺伝子発現に与える効果と、トレーニングを併用した際に得られる効果をRNA-Seqを用いて解析した。有意な変化が見られた遺伝子のGO term解析、クラスタリング、 pathway解析を行い、この脊髄損傷後の硬膜外脊髄電気刺激によって生じた遺伝子発現変化の病態上の意義を探索した。脊髄半切後一回のみ腰髄電気刺激を行う群では、positive regulation of neuron differentiation, positive regulation of neurogenesis等のGO-termに含まれる遺伝子等78の遺伝子発現が刺激なし群に比して優位に増加していた。脊髄半切後に電気刺激と歩行訓練の併用を1週間継続すると、neuron differentiationに加え、neuron projection development, axonogenesis, synapse, myelination,など軸索および髄鞘の再生促進を示唆するGO-termに含まれる遺伝子群が増加していた。
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