研究実績の概要 |
損傷脊髄後の脊髄電気刺激併用トレーニングが機能回復に与える効果を網羅的に解析するため、脊髄半切4日後から脊髄電気刺激療法のみ行う群、脊髄電気刺激と歩行トレーニングを併用する群、脊髄半切後介入を行わないコントロール群を作成し、脊髄のRNA-Seqを行なった。有意な変化が見られた遺伝子のGO term解析、クラスタリング、 pathway 解析を行い、この脊髄損傷後の硬膜外脊髄電気刺激によって生じた遺伝子発現変化の病態上の意義を探索した。脊髄半切後一回のみ脊髄電気刺激を行う群では、 positive regulation of neuron differentiation, positive regulation of neurogenesis等のGO-termに含まれる遺伝子等78の遺伝子発現が刺激なし群に比して優位に増加していた。脊髄半切後に電気刺激と歩行訓練の併用を1週間継続すると、neuron differentiationに加え、neuron projection development, axonogenesis, synapse, myelinationなど軸索および髄鞘の再生促進を示唆するGO-termに含まれる遺伝子群が増加していた。さらに、電気刺激が遺伝子発現に与える影響と運動機能回復の関係を調査するため、マウス第5頸髄レベルで脊髄を半切し、継続的に硬膜外電気刺激を2週間継続したところ、BMSによる下肢運動機能スコア、Finger motion scoring, Forelimb motion scoring, Grip strengthにおいて回復が促進された。運動機能の改善が見られた刺激開始2週後において、神経活動性の指標であるc-Fosの発現が増加していた。また、刺激開始後2週時点においてポストシナプス蛋白の発現増加を認めた。
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