研究実績の概要 |
高齢者の腰痛症例45例(男性10例、女性35例)を対象として、本歩行解析を実施した。平均年齢は69±8.8歳であった。歩行負荷は、直線10mと半円2.5mで1周約25mのオーバル型コースを用いて疼痛により継続困難となるまで平地連続歩行を行った。三次元動作解析システムはVICON MX system (VICON社, Oxford, UK)を用いて脊柱骨盤角度の変化を解析した。体幹筋の脂肪変性をCTでL3椎体高位での大腰筋(PM)と背筋群(BM)、仙腸関節下縁での大殿筋(GM)の筋断面積に対する筋内の脂肪断面積の割合をImage Jを用いて算出した。脊柱骨盤角度変化量(Δ)と体幹筋脂肪変性との関係をSpearmanの順位相関検定で検討した。 脊椎矢状面角度は胸椎TSAで歩行開始時27.8°±13.4/歩行最終時31.3±14.5°、腰椎LSAは7.7±9.7°/ 9.8±10.3°、全脊椎SAは21.4±10.4°/ 24.6±11.3°であった。脊椎の矢状面角度は有意に後弯が連続歩行により増大した。骨盤矢状面角度PSAは3.9±8.8°/ 5.2±9.1°であった。体幹筋の脂肪変性の平均はPM5.6%, BM11.8%, GM8.3%であった。矢状面バランス変化量と体幹筋の脂肪変性の関係ではΔLSAとBM(r=0.39, p<0.05), ΔPSAとBM(r=0.67, p<0.01), GM(r=0.49, p<0.01)に有意な相関を認めた。 本研究では歩行による脊椎骨盤の矢状面バランスの変化と体幹筋の脂肪変性の関連を検討し、脊椎や骨盤の動的な変化と背筋群、大殿筋の脂肪変性との関連を認めた。高齢者の腰痛症の歩行時の脊柱骨盤の動的バランス評価に背筋群や大殿筋の脂肪変性の評価も有用である可能性が示唆された。
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