過去の当グループの研究から、ヒトおよびマウスの軟骨組織において、NR1D1およびBMAL1といった概日リズム制御の中心的役割を果たす遺伝子およびタンパクの発現が年齢や変形性膝関節症の進行とともに低下することを示した。概日リズム遺伝子は脂質代謝やエネルギー代謝の経路とも密接に関わることが報告されており、脂質代謝異常が軟骨における概日リズム遺伝子発現に与える影響を明らかにするとともに、軟骨変性に及ぼす影響を明らかにすることを目的に研究を行った。 肥満によって遺伝子発現および関節内に生じるin vivoの変化を解析するため、通常の食餌摂取マウスと高脂肪食餌摂取マウスを作成した。6週齢マウスを高脂肪食餌で飼育することにより、通常の食餌飼育と比べて飼育開始1週後から有意に体重が増加し、飼育開始12週までに約1.5倍の体重となった。両群の マウスに飼育開始4、8、12週で血液検査を施行したところ、LDLコレステロールを含むコレステロール値の有意な上昇がみられ、脂質異常症を呈していることが 示された。さらに両群における遺伝子発現変化を肝臓および膝関節でリアルタイムPCR法にて解析したところ、エネルギー代謝および概日リズム遺伝子の発現に 異常をきたしていた。この結果を受け、高脂肪食餌摂取に加えて外科的に変形性膝関節症を誘導した動物モデルを作成したところ、肥満・脂質異常マウスでは外科的処置を行わなくても通常食餌摂取マウスと比べ変形性関節症が進行し、外科的処置によってさらに進行が加速することが確認された。これまでの成果について英語論文を執筆し現在投稿中であるが、研究代表者の異動により本研究は終了となった。
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