異所性骨化は、「本来骨が形成されるべきでない場所に発生する」ものと定義されている。一度異所性骨化が形成されると、局所の痛み、重度の可動域の制限などを引き起こし、日常生活レベルが著しく損なわれる。残念ながらその治療は対症療法のみで、今後予防的さらに根治的な治療法の開発が望まれる。治療法が確立されない理由としてあげられるのが、モデルマウス形成の難しさである。骨形成蛋白であるBMPを使用する以外で簡便な手法はない。 筋損傷後に骨化が形成されるマウスを発見し、それを用いて異所性骨化と高圧酸素療法(HBO)の効果を検証することを最後の目的として実験を計画した。今回まず野生型マウスをもちいて、HBO療法の至適時期を検証するのを目的として受傷後直後、受傷後1日後、3日後、5日後、7日後に分け、その違いを検証し、実際の至適開始時期を検討したが、明らかな違いはなかった。また分子細胞的メカニズムをさぐる目的として、石灰化の経過を筋細胞、軟骨細胞、骨芽細胞に着目し、組織学的に検討した。 結果として、高圧酸素療法の効果のメカニズムとして一酸化窒素NOの関与が考えられ、それによってHIF1αが安定化し、さらに血管内皮細胞やマクロファージから分泌されるVEGFやbFGFが増えることとによって筋損傷が改善することが分かった。 さらにHBO療法の頻度としては受傷後5日間連続で暴露することにより筋再生が効果的に進行することが分かった。 今後骨化が形成されるマウスを用いて実験系を組み、HBOと骨化制御のメカニズムを探る。
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