関節軟骨は階層構造を持ち、各層が異なる基質組成を持つ事で、適切な生理的機能を持った関節軟骨が構成されるが、この階層構造の発生・維持のメカニズムは殆ど知られていない。研究代表者が以前の研究で、Rhoタンパクの機能を修飾するそれぞれ関節軟骨で階層特異的に発現する3つの因子を見出した。これらの3つの因子が、各層に特異的な基質形成を誘導する事で、関節軟骨の階層構造が形成・維持されるのではないかとの仮説の元、本研究を行っている。昨年度までに行ったKOマウスを用いたin vivo解析により、これらの3つの因子が全て、各階層に特異的な階層構造の形成に関与していることを支持する結果を見出している。 本年度は、昨年度までに見出した組織学的所見について、さらに詳細に解析することを目標としていた。しかし、関節軟骨の階層構造の乱れや軟骨細胞の形態や配列の乱れなどを組織切片から客観的・定量的に解析する有効な手法がなかった。この状況に対処するため、近年発展が著しいdeep learningの手法を、関節軟骨の組織学的解析に応用する手法の開発に着手した。現時点までに、マウス膝関節の組織学的切片から自動的に内外側コンパートメントを検出する手法を開発し、原著論文として発表している(7. 研究発表)。さらに、マウスのdapi染色した切片から、関節軟骨領域を自動的にsegmentationする手法を開発し、現在投稿準備中である。 今後は、AIによる画像解析の手法の開発を更に進め、その結果を本研究で対象とする3因子のin vivo解析に応用し、より詳細にこれらの機能を明らかにしていく方針である。
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