研究課題/領域番号 |
19K18541
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
河合 桃太郎 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (30837034)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 脊髄損傷 / ヒトiPS細胞 / 細胞移植 / 神経前駆細胞 / DREADD / chemogenetics / hM3Dq |
研究実績の概要 |
供与を受けたhM3Dq発現ベクターを改変し、①種々のプロモーターの比較、および、②標識のための蛍光タンパク質との共発現との方法の比較を行うために、数種類のレンチウイルスベクターを作成した。タンパク発現量や発現の安定性の比較をし、今回の実験に適したベクターについて検討を行った。数種類のレンチウイルスベクターの中で、ヒトiPS由来神経前駆細胞に感染させた後に神経分化誘導を行った際に、もっともhM3Dq発現量が多く、安定して発現がみられるものを、以降の実験で用いることにした。 得られたレンチウイルスベクターを感染させたhM3Dq発現神経細胞が、Clozapine-N-Oxide(CNO)投与に応じて、細胞内Ca濃度を上昇させることをカルシウムイメージングによって確認した。この際、細胞に感染させるウイルス量を様々に変化させることによって、hM3Dqの発現量がconstitutive activeとならず、また細胞への毒性を来たさない範囲になるように調整した。その上で、CNO投与濃度を様々に変化させた上での細胞の反応の度合いを観察し、今回の実験に用いるウイルス感染量ならびにCNO投与量についての検討を行った。 さらに、hM3Dq発現神経細胞がCNOの投与によってGqシグナルを活性化させることを、immediate early genes(IEGs)の遺伝子発現からも確認をした。hM3Dq発現細胞にCNOを作用させた際に、種々のIEGsのmRNAの転写が起こることを、qPCRによって定量して、CNO非投与時との比較を行った。hM3Dq発現細胞においては、CNO投与によって神経細胞が活性化することをIEGsの遺伝子発現の上昇から確認した。 現在、この細胞を用いて、CNOを繰り返し長期間作用させることで、細胞の形態や分化傾向や遺伝子発現や電気的活動に変化が起こるかについての検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年計画の1年目を終了し、レンチウイルスベクターの作成ならびに作用の確認と、In vitroでの解析をすすめている。当初の計画に沿って進行していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当初の計画に沿って、In vitroでの解析を進めながら、In vivoでの実験を行っていく。 In vitroにおいては、トランスクリプトーム解析による網羅的な遺伝子発現の解析を行い、DREADDによる神経細胞の刺激がどのような効果をもたしうるかについて検討を行う。 In vivoにおいては、まずは亜急性期脊髄損傷モデルマウスを用いた実験を施行する。機能解析では、後肢運動機能評価を行いながら、疼痛評価による感覚系の評価もあわせて行っていく。さらに、免疫染色並びにIn vivoでの遺伝子発現解析を施行する。In vitroで得られた結果とあわせて、組織像や遺伝子発現の変化が、表現型としての機能評価結果とどのように結びつくのかについて考察を行う。 以上の結果についてまとめて、学会発表並びに論文発表を目指していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞の遺伝子発現解析について、より網羅的な解析を行いたいと考えている。
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