hM3Dq を発現するレンチウイルスを作成した。作成したレンチウイルスを用いて、iPS 細胞由来の神経前駆細胞にhM3Dq を発現させた。発現させたhM3Dq がClozapine N-oxide(CNO)に反応して細胞内Ca 濃度を変化させることをCa イメージングの手法で確認した。Ca 上昇後に神経細胞の活動性の上昇がおこることをImmediate early genes の発現量の定量によって確認をした。更にhM3Dq発現細胞はCa 上昇に引き続いて周囲のhM3Dq非発現細胞を活性化させることを同様に確認した。 同様の神経前駆細胞を脊髄損傷後のマウスに移植をして、連日CNO を腹腔内投与することで移植細胞を選択的に刺激した。42日間の観察で、移植に加えてCNO を腹腔内投与した群(CNO投与群)で運動機能が回復することを様々な運動機能評価によって確認をした。 CNO による細胞刺激によって、移植組織中で変化が起こっている変化を移植後脊髄のRNA sequenceによって検討した。損傷後14日のマウスにおいて、CNO投与群では非投与群と比較しシナプスに関連する遺伝子群で発現上昇が起こっていることを確認した。Gene Ontology 解析やGene Set Enrichment Analysis においても同様にシナプス関連の遺伝子の発現上昇が起こっていることを確かめた。更にSyn1やvGLUT1やvGATといったシナプスに関連するタンパク質についても同様にCNO投与群で発現上昇が起こっていることをcapillary electrophoresisで定量し確認した。 これらの検討から、CNO 投与による選択的な移植細胞の刺激によって、移植細胞と移植部周囲のマウスの細胞の間でシナプス伝達を亢進させることが運動機能の改善に寄与することが考えられた。
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