研究実績の概要 |
近年、SODはタンパク質合成後の翻訳後修飾により活性が変動することが注目されており、ヒト変形性関節症(OA )軟骨におけるSODのアイソザイムである1,2,3 を総合的に評価できるSOD 活性に着目した。本研究ではOA 患者の全身および関節内のSOD 活性を同時に評価することで、SOD 活性がOAの進行度を予測できる予防・治療のバイオマーカーとなりうるか明らかにすることを目指す。末期膝OA 患者の血清、関節液、軟骨、滑膜におけるSOD 活性値の関連性の検討すべく、人工膝関節全置換術を施行する末期膝OA 患者の血清、関節液、軟骨、滑膜におけるSOD 活性の測定を行ない、各測定試料ごとの関連性を評価することとした。いずれの試料も人工膝関節全置換術(TKA)を受けた末期の膝OA患者(n = 23)から採取した。軟骨と滑膜は、生検鉗子で膝蓋大腿関節の外側から採取した。SOD活性はSOD assay kit(Cayman Chemicals)で評価した。マロンジアルデヒド(MDA)レベルは、脂質過酸化分解生成物の酸化ストレスマーカーとして、MDA assay kitを用いて評価した。患者のインフォームドコンセントは、この研究に登録する前に取得され、順天堂大学倫理委員会によって承認された。 滑膜におけるSOD活性は軟骨におけるSOD活性に比べ有意に高かった。関節液SOD活性、血清SOD活性との関連性については、予備試験を含め関節液SODと血清SODの大小関係の傾向が真逆となったため、現在再評価中である。予想外なことに、OAの病態に滑膜SODが強く関わっている可能性が示唆された。OA 患者における全身および局所のSOD 活性の動向がつかめれば、外来レベルでOA 患者の進行度を簡易的に評価できる可能性が高まる。
|