研究課題
本年度は、自然治癒不可能な2mmの骨欠損を有するマウス広範囲骨欠損モデルを用いて、骨欠損部に成長因子を含有させた注入型局所硬化ゲルを投与し、骨欠損治癒促進効果を明らかにすることを目的とした。9週齢雄性C57BL/6Jマウスの右大腿骨にマウス専用創外固定器を設置後、骨幹部中央に約2 mmの骨欠損を作製し、広範囲骨欠損モデルとした。ゲル剤はヒアルロン酸を主骨格、チラミンを架橋基とし、過酸化水素水と混和すると硬化するものを用いた。骨欠損のみの群(defect群)、骨欠損部に局所硬化ヒアルロン酸ゲルのみを投与した群(HA群)、骨欠損部にBMP-2(2μg)含有PBSを投与した群(PBS/BMP群)、骨欠損部にBMP-2(2μg)含有局所硬化ヒアルロン酸ゲルを投与した群(HA/BMP群)の4群を作製した(各群n=6)。作製直後および14日後に軟X線撮影(Xp)を行った。術後14日で屠殺して右大腿骨を採取後、micro CTで撮影して骨欠損部における骨癒合(union)の評価し、骨欠損部における骨量(BV)と骨塩量(BMC)を測定した。また、組織学的に評価した。Xpおよび組織像では、HA/BMP群およびPBS/BMP群で新生骨の形成を認めていたが、HA/BMP群の方がより旺盛だった。defect群およびHA群では新生骨形成はほとんど認められなかった。HA/BMP群は6例中5例union、PBS/BMP群は6例中2例unionだったが、defect群とHA群は全例non unionだった。HA/BMP群は他の3群と比較してBVおよびBMCとも有意に高値だった(p<0.001)。BMP-2含有局所硬化ヒアルロン酸ゲル剤は、マウス広範囲骨欠損モデルにおいて骨欠損治癒を促進した。本方法はBMP-2の局所送達による新規骨欠損治療法として有用かもしれない。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り局所硬化ゲルを用いた成長因子徐放による骨形成促進に成功しており、概ね順調に進展していると考えられる。
間葉系幹細胞との併用による相加効果、相乗効果を検討する。
コロナウイルスの蔓延により、動物実験の施行が一部遅れたため次年度使用額が生じた。来年度使用する予定である。
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J Orthop Res
巻: 37 ページ: 2258-2263
10.1002/jor.24349.