研究課題
【研究概要】アルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)遺伝子多型は東アジアに特徴的な遺伝子多型であるが、変異型ALDH2遺伝子保有者は日本において45%の頻度でみられ、アルツハイマー病、食道癌、骨粗鬆症の頻度が高いことが報告されている。本研究では通常のCTよりも10倍解像度が高いHR-pQCTを用いて橈骨、脛骨遠位部の骨微細構造のALDH2遺伝子多型における違いを明らかにし、さらに骨形成促進剤であるPTH製剤による骨量増加効果の違いをprospectiveに評価することを目的とした。【研究実績】正常型ALDH2遺伝子保有者15症例、変異型ALDH2遺伝子保有者14症例まで解析がすすんでいる。①DXAデータ:腰椎骨密度、大腿骨頚部骨密度は変異型ALDH2遺伝子保有者で低い傾向、大腿骨全体骨密度は差はなし。腰椎海綿骨スコア(TBS)は差なし。②HR-pQCTデータ:脛骨全体骨密度、皮質骨骨密度は差がない一方、海綿骨骨密度は変異型ALDH2遺伝子保有者で低い傾向であった。脛骨BV/TV(骨量)は変異型ALDH2遺伝子保有者で低い傾向があり、脛骨皮質骨厚、Cortical Porosity(皮質骨多孔化)は差がなかった。橈骨全体骨密度、皮質骨骨密度は差がない一方、海綿骨骨密度は変異型ALDH2遺伝子保有者で低い傾向であった。橈骨BV/TVは変異型ALDH2遺伝子保有者で低い傾向で、橈骨皮質骨厚は変異型ALDH2遺伝子保有者が大きい傾向があり、Cortical Porosityは変異型ALDH2遺伝子保有者で低い傾向を認めた。③その他25(OH)D濃度を含めた血液検査項目:2群間で有意差なし。
2: おおむね順調に進展している
本研究2年目である令和2年度は、症例数が増加し、上記のような結果が得られ、有意差がない項目が多いものの、おおよその傾向は掴めてきたのではないかと考える。さらに症例数が増加することで、興味深い結果が得られるのではないかと考えている。
令和3年度は本研究課題の最終年度に当たる。引き続き、対象患者を増やして解析をすすめ、治療開始前のナイーブな状態での、ALDH2遺伝子多型における骨微細構造の違いを明らかにし、学会発表、論文作成を行っていきたい。また、本研究の対象患者において、骨粗鬆症治療薬として骨形成促進剤であるPTH製剤の治療適応患者が少なく、実際にPTH製剤の治療効果判定を比較することは数例のみでしか行えていないが、ビスフォスフォネート製剤などの他の骨粗鬆症治療薬での治療効果判定も検討したい。
おおむね順調に研究は進展しているが、症例数確保や骨粗鬆症治療薬の検討に関しては、COVID-19の影響により計画的にすすまなかった点もあるため、次年度の使用が生じた。次年度は遺伝子解析と、結果のまとめと統計学的考察、学会発表、論文作成などへの使用を予定している。
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