脊椎靭帯骨化症は、糖尿病や肥満を多く合併している傾向があるが、その機序の詳細は不明である。高血糖状態では糖とタンパクは架橋形成により終末糖化産物(Advanced Glycation End Products; AGEs)を形成し、タンパクを変性劣化させることが注目されている。また、肥満患者において、2型糖尿病、肥満、その他代謝異常に加え、脂肪肝を認める場合、metabolic dysfunction-associated fatty liver disease(MAFLD)という概念が確立しつつあり、MAFLDは高率にOPLLを認める。そこで、糖尿病で高血糖が持続することで、AGEsが後縦靭帯などの脊椎靭帯骨化症の一因になるという仮説を検証することを最終的な目標とし、まずは、糖尿病おいて、後縦靭帯内にAGEsが有意に蓄積するかを確認することを本研究の目的とした。 2型糖尿病モデルラットであるZucker Diabetic Fatty(ZDF)ラット(fa/fa)、糖尿病を発症しない肥満モデルラットであるZucker Fattyラット(fa/fa)、そのコントロールであるZucker Fattyラット(+/+)の3群間で後縦靭帯内のAGEsの比較を行なった。比較は、およそ6ヶ月飼育した各群のラットにおいて、摘出した後縦靭帯のAGEsのELISAによる定量および組織学的評価により行なった。 ELISAでは、AGEsとしてMGおよびCMLの測定を行なったが、いずれもZDFラットで有意な増加は認めなかった。組織学的評価では、CMLによる染色を実施済みであるが、ZDFラットで他種ラットに比し有意に強く染色されることはなかった。 ELISAによる後縦靭帯内AGEsの定量と組織学的評価からは、少なくともZDFラットにおいて、有意にAGEsが後縦靭帯に蓄積するわけではないことがわかった。
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