研究課題
腫瘍血管内皮細胞は積極的にがんの悪性化,転移促進にも影響を与えうることが示唆される.本研究では,腫瘍組織から剥がれ落ちた腫瘍血管内皮細胞が接着因子の発現を介してがん細胞とクラスターを形成し,転移巣への漂着を促進している可能性があるのではないかと考えに着目してin vitro, in vivo実験および臨床検体の解析を行っている.これまでに,in vivo実験で腫瘍血管内皮細胞とがん細胞がクラスターを形成することによるがん細胞の転移が促進されることが証明された.そのメカニズムを担癌マウスより分離した腎癌由来の腫瘍血管内皮細胞と腎癌細胞をつかったin vitro実験を中心に解析したところ,腎癌由来腫瘍血管内皮細胞―腎癌細胞のクラスター状態において,癌細胞で変化が起こっている分子が同定された.一昨年,昨年度は,ヒト腎癌の手術摘出標本を用いた臨床研究を中心に行っており,腎癌組織の免疫組織学的解析をすすめた.腎癌組織の血管内にCD34陽性細胞を含む細胞塊を認める症例と認めない症例の予後を比較したところ,CD34陽性細胞を含む細胞塊を認める症例の再発,転移率が高い傾向にあり,実際のヒト腎癌においても,上記のような腫瘍血管内皮細胞-腎癌細胞クラスターが転移に影響をあたえる可能性が示唆された.さらに担癌状態患者の血液中から腫瘍血管内皮細胞-腎癌細胞クラスターの抽出を試み,複数の症例で細胞塊が抽出され,そこに含まれる細胞の由来や分子発現の状況を解析した.
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Cancer Science
巻: 113 ページ: 1855~1867
10.1111/cas.15323