現在、我が国において挙児希望を有するカップルの約15%が不妊症に悩まされており、不妊原因は多岐にわたるものの、約半数は男性因子が関与をしている。そのうちの10%は、閉塞性無精子症に起因するとされており、精巣生検の組織型により、精子低形成、減数分裂停止、及びSertoli Cell-Only Syndrome (SCOS)に分類される。本研究では、SCOS患者を集め、次世代シークエンサーを用いたWhole Exome Sequencing(WES)を行い、SCOSに関わる新規遺伝子の同定を目的とする。さらに、人工知能(AI)システムの活用により、WESで得られた遺伝子変異候補を有する。 遺伝子群が既知遺伝子群との間で疾患と妥当性があるかどうかを評価する。一連の解析により、新規の原因遺伝子が同定された場合は、結晶構造解析やノックアウトマウスの作成により、原因遺伝子変異の機能解析も行う。 本研究により、ヒトの全エクソームを網羅的に解析することが可能であり、他の類縁疾患との類似点や相違点を抽出し、精子形成過程のメカニズムを解明する一助になる。また、医療の現場で活用されつつあるAIシステムを駆使することで、SCOSの新規の原因遺伝子を同定し、この分野の研究の裾野を広げることができる。さらに、従来は精巣生検のみでしか診断できなかった本疾患を、DNAの採取という、より低侵襲の検査で原因を明らかにすることができ、男性不妊症患者の遺伝学的な診断の確立にも貢献できる。
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