研究課題/領域番号 |
19K18558
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中野 剛佑 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (00804410)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 血中遊離DNA / 尿路上皮癌 |
研究実績の概要 |
我々はまず、尿路上皮癌患者の血漿から血中遊離DNA(cfDNA)を抽出し、濃度をリアルタイムPCR法で、断片長をマイクロチップ型自動解析電気泳動装置で測定し、健常者と比較することで、尿路上皮癌患者では健常者と比較して有意にcfDNAの濃度が高く、断片長が短いことを見出した。さらに同じ尿路上皮癌患者の中でも、進行癌では早期癌と比較してその傾向はより強まることを明らかにした。また、他の血液マーカーとの相関から、cfDNAの濃度上昇や断片化に炎症が関連しているという仮説を立て検証を行なった。数種類の炎症性サイトカインを添加した培地で細胞培養実験を行うことで、特定のサイトカインを添加した培地で、培養上清から得られるcfDNA断片の短小化が亢進していることが明らかになった。今後は特定したサイトカインが実際に患者血清中で上昇しているかの検証を行う予定である。 人工知能AI活用した早期診断システムの開発に関しては、症例数が少なく、詳細な検証は行えていない状況にある。 また、cfDNAのシークエンスおよび癌特異的DNA変異の同定のため、少数例ではあるが、遺伝子検査パネルを用いてcfDNAのターゲットシークエンスを施行した。シークエンスの結果、約60%の尿路上皮癌患者のcfDNAに変異を同定し、変異遺伝子の中でも、TP53やMAP2K1、FGFR3の変異頻度が高いという結果が得られた。この事実は既報と一致しており、遺伝子検査パネルによるターゲットシークエンスが正しく行えていると判断し、今後さらに症例数を増やし血液バイオマーカーとしての有用性を検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
血中cfDNA断片の短小化メカニズムの解明に関しては概ね予定通り進行している。人工知能AIを用いた早期診断血流マーカーとしての臨床応用に関しては、症例数が少なく進行が遅れている状況にある。また、ctDNAの同定に関しては、現在のところ少数例のcfDNAのシークエンスで検証できており、今後は症例数を増やしてモニタリングマーカーとしての有用性を評価する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
細胞培養実験で特定したcfDNAの断片化に関わる炎症性サイトカインが実際に尿路上皮癌患者血清中で上昇しているのかを確認する。また人工知能AIによる診断や、ctDNAのモニタリングマーカーとしての有用性を検討するために、さらに症例数を蓄積し検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため、当初の見込み額と執行金額が異なった。
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