まず初めに膀胱がんの細胞株(T24、UMUC-1、UMUC-3、TCC-sup、J82、RT-4)の上清にS100たんぱく質や、HMGB1が分泌されることを確認した。そしてHMGB1 が膀胱がん細胞株の細胞遊走能を亢進するのを確認するために、Boyden Chamber を用いたMigration Assayにて確認した。HMGB1濃度依存性に細胞の遊走能が亢進していることが分かった。次に、HMGB1のレセプターであるRAGEをターゲットとした実験を行った。まずはRAGEをKnock outさせた線維芽細胞を24wellに接着・培養後にMigration assayを行った。このようにすることで、癌細胞と線維芽細胞の共培養における遊走能を確認することができる。線維芽細胞と共培養することで膀胱がん細胞株の遊走能は亢進し、RAGEをKOすることで遊走能は抑制することが分かった。これより、膀胱がんと線維芽細胞の間には遊走能を亢進させる相互作用があり、その一端を線維芽細胞側のRAGEが関与していると考えられた。さらに、RAGEの重要性、HMGB1の影響を調べるために、RAGE-Fc(HMGB1と結合することでRAGEのインヒビターとして働く)を用いた実験を行った。線維芽細胞と共培養することで亢進した遊走能は、RAGE-Fcによって抑制されることが分かった。これにより、遊走能の亢進にはHMGB1-RAGE経路が関与している可能性が考えられた。今後はHMGB1-RAGE経路の下流の経路をさらに突き詰めるとともに、in Vivoによる実験系でのRAGE-Fcの治療薬としての可能性について考察を深める予定である。
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