研究実績の概要 |
進行性前立腺癌に対する一次療法は去勢治療であるが、治療経過において去勢治療抵抗性となり増悪する前立腺癌が多くみられる。治療抵抗性前立腺癌に対しては複数の治療薬が存在し、早期の導入により(治療抵抗性獲得前の使用など)治療効果が改善したなどの報告がある。しかし、去勢治療に対する反応性予測マーカーが無く、患者選択においての基準が困難である。 Patient Derived Xenograft(PDX)モデルであるKUCaPシリーズは、前立腺癌の去勢療法への反応性と遺伝子発現に多様性を有し、臨床における前立腺癌の多様性を再現している。去勢反応性のモデルと、去勢治療抵抗性モデル、去勢治療反応性前立腺癌細胞株LNCaPにおいてRNA sequenceを使用し遺伝子発現の解析を行った。去勢治療抵抗性モデルに高発現であった遺伝子IL13Ra2(インターロイキン13受容体α2)に着目し去勢反応性予測マーカー候補となる可能性について検証を行った。 KUCaP、前立腺癌細胞株のPC3,22RV1,LNCaPを使用しIL13Ra2の発現解析を行ったところ、去勢治療抵抗性群において高発現であった。次に、低発現であるLNCaPを用いて安定的にIL13Ra2の強制発現した細胞を樹立した。in vitroにおいてアンドロゲンを除去した培地で培養した結果、細胞増殖能で有意な差を認めた。in vivoの実験において、マウス皮下に移植し、マウスの去勢療法を行ったところ、腫瘍の生着率増大速度、去勢反応性において違いを認めた。治療前前立腺生検臨床検体組織を用いて免疫染色を行なったところ、後に治療抵抗性前立腺癌となった患者において有意にIL13Ra2免疫染色陽性率が高かった。IL13Ra2は前立腺癌治療効果予測マーカーとなりうる可能性がある。
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