これまでの検討により、筋層浸潤性膀胱癌におけるリゾフォスファチジン酸受容体(LPA1)の発現亢進を免疫組織化学染色法、定量的リアルタイムPCR法により確認し報告してきた。LPA1を発現するヒト膀胱癌細胞株T24ではLPA投与によりROCK1、リン酸化MYPT1、リン酸化MLC発現亢進とラメリポディアの形成が認められることを確認した。さらにLPA1阻害剤、およびLPA1ノックダウンによりこれらが抑制されることを確認した。また、LPAによりT24膀胱癌細胞株の浸潤能が亢進すること、LPA受容体阻害剤やノックダウンにより浸潤能は抑制されることを確認した。LPAが浸潤能亢進に関与していることが明らかになった一方、細胞増殖アッセイの結果によるとLPAは細胞増殖には影響を及ぼさない可能性が示唆された。 T24膀胱癌細胞を用いたスクラッチアッセイでは、LPA濃度依存性に遊走能亢進が認められた。また、LPA1阻害剤投与下、siRNAによるLPA1発現抑制により遊走能亢進は抑制されることが確認された。Rho-activation assayによりLPA投与下にT24膀胱癌細胞におけるRho活性化を確認した。これはKi16425投与にて抑制された。ゼラチンザイモグラフィーによるマ トリックスメタロプロテアーゼ解析を行ったところ、LPA存在下にMMP2活性が認められる傾向が認められたが、MMP-9活性は認められなかった。LPA1受容体阻害剤およびLPA1ノックダウンによるMMP-2活性亢進は抑制された。これらの結果よりT24はLPA1を介してRho-ROCK経路が活性化し、細胞遊走能、浸潤能が亢進することが示唆された。また、LPA1を介してMMP2活性が更新し、浸潤能が亢進する可能性が示唆された。
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