研究実績の概要 |
シュウ酸Ca結晶をマウス由来尿細管細胞に添加してオートファジーの発現を検討した。オートファジーの発現確認のためにtfLC3のプラスミドを細胞にトランスフェクションした。結晶の添加によりオートファジーの発現上昇を示すred-signal(RFP-LC3)の発現が一時的に上昇したが、添加を続けると発現が低下し、最終的にはGFP,RFP-LC3両者の発現が低下することが確認された。このことは、結晶添加がオートファジーの過程であるオートファゴソームとリソソームとの融合を阻害しているのではなく、オートファジーの起点となるオートファゴソーム形成からその過程すべてが傷害されていると考えられた。そこで、オートファジーを上流で制御するmTORの発現、更にはmTORによって制御をうけ、リソソーム形成やオートファジー活性化に関わるTFEBの発現を調べたところ結晶の添加とともにmTOR発現は上昇する一方で、TFEBの発現は低下した。TFEBのターゲットとなるlamp1,uvragの発現をqPCRで確認したところ、TFEBの発現低下を反映して同様に発現が低下することがわかった。また、オートファジーで発現が低下するリン酸化p62の発現は、オートファジーの発現低下を反映して上昇していた。このリン酸化p62は酸化ストレス抑制作用のあるkeap1-NRF2経路における、同作用の低下をもたらしている可能性が傾向免疫染色、Western blottingによって示唆された。結石モデルマウスにおいても同様な発見があったことからも、上流因子異常によるオートファジー低下が結石形成に関わる可能性が考えられる。
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