研究課題
精巣には、精祖細胞・精母細胞・精子細胞・精子の一連の生殖細胞群が存在するが、このうち精子細胞・精子は、免疫系の発達以降に分化成熟するため、精子を含む雄性生殖細胞には多くの非自己として認識される抗原分子が含まれている。実験的自己免疫性精巣炎(EAO)は、精巣抗原に対する自己免疫により、精巣へのリンパ球浸潤と造精障害を引き起こす免疫性男性不妊のひとつの疾患モデルである。2021年度は、前年度において血清自己抗体およびT細胞増殖反応を示したGTPase活性化タンパク質(GIT)に注目し解析を行った。特にGITにおいてアジュバントと共に各種濃度(100、200、400μg)の条件下で、14日間隔で2回皮下注射後、経時的(40日後、60日後、120日後)に精巣を組織学的に解析した。その結果、最初の免疫から40日後において200μgと400μgを接種した群は、精巣網周囲にリンパ球浸潤が確認されたが、100μgとコントロール群では確認されなかった。また、60日後では200μgを接種した群において他の群に比べ、より高頻度にリンパ球浸潤を認め、その炎症は曲精細管周囲および間質全体に拡がっていた。このことからGITも熱ショックタンパク質A4Lと同様にEAOを惹起する標的抗原であることが分かった。また、種を超えた共通抗原の同定のためにラットに対し同定したマウス自己抗原をアジュバントと共に接種し組織学的解析を行ったところ明らかなリンパ球浸潤及び精子形成障害は認められなかった。しかしながら、ラットに対しマウス雄性生殖細胞をアジュバントと共に接種したところリンパ球浸潤と精子形成障害が認められた。これはラット及びマウス間に自己免疫精巣炎を誘起する共通抗原が存在することを示しており、今後はこれら異種EAOモデルを用いた抗原解析および抗原接種量の検討が必要である。
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