研究実績の概要 |
食塩感受性高血圧ラットモデル(Dahl Salt-sensitive Rat(DSr))を用いて高食塩食、高血圧、尿路結石の関連性について検討した。まず、7週齢の雄DSrを高食塩食の有無、結石形成負荷、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(Epl)投与の有無によって5群に分け実験を行った。高食塩摂取により血圧の上昇とシュウ酸カルシウム(CaOx)の尿中過飽和度、酸化ストレス、腎組織への結晶沈着の増加が観察された。降圧薬であるEplの投与は高食塩食による血圧の上昇だけでなく酸化ストレス・結晶沈着も抑制した。次に、ラット摘出腎からTotal RNAを抽出し、網羅的遺伝子解析としてマイクロアレイ法を用いて検討した。クラスター解析を用いて遺伝子発現を解析し結晶形成に関与しうる候補遺伝子をリストアップし、既報のCP, Cldn10, Umodに加え、新たにAlox15b, MMP7, TGF-β2の関連が示唆された。Semi-quantitative RT-PCRによるvalidationを行い遺伝子発現の整合性が確認された。以上のことから、食塩感受性高血圧ラットを用いて食塩感受性高血圧を有する尿路結石ラットモデルを初めて確立した。このモデルにより高食塩食は血圧上昇以外に、シュウ酸カルシウムの尿中過飽和度の増加や酸化ストレスマーカーの増加による腎組織への結晶沈着増加を証明した。また、選択的アルドステロン受容体拮抗薬(エプレレノン(Epl))は高血圧の発症抑制だけではなく酸化ストレスを抑制させ結晶沈着を抑制させることを明らかにした。さらに、高食塩食は遺伝子発現を伴う微小環境の変化が結晶形成や組織損傷に寄与している可能性を検証した。EplはTGF-β2を抑制させることで結晶沈着を抑制させることを解明した。
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