研究課題/領域番号 |
19K18575
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
鈴木 裕一朗 弘前大学, 医学部附属病院, 講師 (50647344)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 糖鎖解析 |
研究実績の概要 |
局所進行性もしくは転移性の尿路上皮癌(膀胱癌や腎盂尿管癌)は予後不良の疾患であるため、早期発見が重要である。しかし正確な診断には膀胱鏡・尿管鏡などの侵襲的な検査が必要であり、低侵襲かつ有効なバイオマーカーは開発されていない。更に治療においても適切な患者選択や治療効果予測は極めて重要であるが、治療効果を予測するバイオマーカーも開発されていない。このような状況下、患者の全身状況のモニタリングが可能となるLiquid biopsyが近年普及してきており、研究段階ではあるがいくつかの癌種で血清糖鎖の網羅的解析、Cell free DNA (cfDNA)、Circulating tumor Cell (CTC) を用いた診断や治療効果予測なども行われている。このことからLiquid biopsyによる診断や治療効果予測マーカーの実用化は治療効果向上および医療費軽減につながる可能性があり、その開発は急務である。令和元年度は、尿路上皮癌患者の治療前血清を用いて、網羅的糖鎖解析装置による尿路上皮癌患者の血清糖鎖プロファイリングを行った。その結果、尿路上皮癌によく反応するレクチンが同定された。それらレクチンから免疫グロブリン関連糖鎖の変化が示唆されたため、免疫グロブリンに焦点を当て、糖鎖構造を検討した。その結果、特徴的な糖鎖が変化している可能性が示唆され、それらの臨床的意義を検討中である。 また健常コントロール群と尿路上皮癌患者の末梢血検体からcfDNAを抽出し、糖転移酵素遺伝子の発現を検出可能か検証を開始した。現在尿路上皮癌患者60名、健常人60名程度の検体が集まっており、今後検体を追加し糖鎖関連遺伝子発現の検討を開始する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度は、尿路上皮癌患者の治療前血清を用いて、網羅的糖鎖解析装置による尿路上皮癌患者の血清糖鎖プロファイリングを行った。その結果、尿路上皮癌によく反応するレクチンが同定され、同時に尿路上皮癌に特徴的な糖鎖構造も同定されつつある。また健常コントロール群と尿路上皮癌患者の末梢血検体からcfDNAを抽出し、糖転移酵素遺伝子の発現が検出可能かどうか検討している。徐々に検体が集まっており、今後追加し検討を開始できる見込みである。以上より、おおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は検体数を増やし、尿路上皮癌患者の治療前血清を用いて、網羅的糖鎖解析装置による尿路上皮癌患者の血清糖鎖プロファイリングを行い、免疫グロブリンの糖鎖構造変異と臨床的アウトカムについて調査を行う予定である。 また健常コントロール群と尿路上皮癌患者のcfDNAから、糖転移酵素遺伝子の発現の検討を行っている。今後も症例数を増やす予定である。
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