研究課題
局所進行性もしくは転移性の尿路上皮癌は予後不良の疾患である。早期発見が重要であるが、正確な診断には膀胱鏡・尿管鏡などの侵襲的な検査が必要であり、低侵襲かつ有効なバイオマーカーは開発されていない。研究段階ではあるがいくつかの癌種で血清糖鎖の網羅的解析、Cell free DNA (cfDNA)、Circulating tumor Cell (CTC) を用いた診断や治療効果予測なども行われている。このことからLiquid biopsyによる診断や治療効果予測マーカーの実用化は治療効果向上および医療費軽減につながる可能性があり、その開発は急務である。我々はcfDNAから糖転移酵素遺伝子の発現と、網羅的糖鎖解析装置による尿路上皮癌患者の血清糖鎖プロファイリング解析を行った。健常コントロール群269名と尿路上皮癌患者281名の血液検体からcfDNAを抽出し、糖転移酵素遺伝子の発現が診断に有効か検証した。しかし糖転移酵素の発現による検討では尿路上皮癌を区別できない可能性が示唆された。そこで尿路上皮癌患者の治療前血清を用いて、網羅的糖鎖解析装置による尿路上皮癌患者の血清糖鎖プロファイリングを行った。その結果から免疫グロブリン関連糖鎖の変化が示唆された。免疫グロブリンの糖鎖構造を検討したところ、特徴的な糖鎖が変化している可能性が示唆された。血清イムノグロブリンに結合する26種類のN型糖鎖の濃度を定量化し、得られた26種類の糖鎖濃度をAI(Datarobot®)に投入し診断モデルを作成した。全体の80%でモデル作成、残り20%でバリデーションを行った。その結果、尿路上皮癌においてAUC0.98~0.99と高い精度で健常群と判別することが可能であった。糖鎖解析とcell-free DNAを併用した予後予測は今後の検討課題である。
すべて 2021
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Urologic Oncology: Seminars and Original Investigations
巻: 39 ページ: 832.e17~832.e23
10.1016/j.urolonc.2021.03.011