研究課題/領域番号 |
19K18576
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 悠佑 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (20372378)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 尿路上皮癌 / 腎盂尿管癌 / ゲノム解析 / 遺伝子変異 |
研究実績の概要 |
東京大学医学部附属病院泌尿器科において手術を行った腎盂尿管癌200症例について手術検体を採取し、全エクソンシークエンシングによる網羅的な遺伝子変異解析、RNAシークエンシングによる網羅的な遺伝子発現解析を行った。その結果、腎盂尿管癌ではTP53遺伝子変異、FGFR3遺伝子変異、RAS遺伝子群の変異がほぼ排他的に存在し、遺伝子変異に基づいた病型分類が可能であることが明らかになった。これらの病型は、臨床的な特徴とよく相関しており、TP53遺伝子変異群は高悪性度の腫瘍が多く予後不良であったのに対し、FGFR3遺伝子変異群は低悪性度のものが多く予後良好であった。また、遺伝子発現のプロファイルにも、遺伝子変異のパターンとの強い関連が見られた。 さらに、術前および術後の尿検体も蓄積しており、これらの尿沈渣からDNAを抽出し遺伝子変異解析を行った。術前の尿からは感度よく癌細胞由来の遺伝子変異を検出できている一方、術後の尿からはそれらの変異は検出されなかった。現在診療で標準的に用いられている尿細胞診と比較して、より高感度に癌を診断できる可能性が高いと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画当初の想定通りの検体収集ができ、腎盂尿管癌におけるゲノム解析の研究としては、世界的に見ても最大規模のものとなっている。新型コロナウイルスの蔓延に伴い一時的に実験の進捗が停止した時期もあったが、検体の集積は継続して行っていた。実験や解析についても現在は問題なく進行している。
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今後の研究の推進方策 |
腎盂尿管癌の手術症例の一部では、腫瘍部だけでなく非腫瘍部の粘膜も採取しており、これを用いて網羅的な遺伝子変異解析をすることにより、多中心性多発の分子メカニズムを明らかにしていく。また、術前ならびに術後の尿検体についても既に多数の検体が集積されており、尿沈査由来のDNAを用いた遺伝子変異解析も引き続き進めることで、より確かでインパクトのある結果を求めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの蔓延に伴う研究活動の縮小により、本研究についても進捗が停止した時期があったため。現在は研究活動を再開しており、引き続き研究に必要な物品や旅費を中心に使用していく予定である。
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