多様性のあるCRPCの病態研究において細胞株は十分に臨床病態を反映したモデルとは言えないため、我々は複数の特徴的なCRPC患者由来PDXモデル (KUCaPs) を樹立してきた。しかし、PDXは遺伝子操作やドラッグスクリーニングが困難であるという欠点があるため、それらの実験手法も可能なオルガノイドに着目した。前立腺癌の分野においてはPDXもオルガノイドも樹立が困難であったため、世界的にも報告は限られているが、我々は既に複数のPDXを有し、ARTA耐性のPDXも作成している。また、「創薬拠点コアラボ」には約2500種類の既存薬および機能既知化合物を保有しており、これらを用いたハイスループットドラッグスクリーニングが可能である。上記を組み合わせることで、難治性CRPCの新たな治療法および患者個別の治療法の開発を目的とする。当研究室が保有する複数種類のPDXを用いてオルガノイドを作成することで、これまでPDXでは困難とされていたハイスループットなドラッグスクリーニングを可能とし、去勢抵抗性前立腺癌の新規治療薬の開発を目的として実験を進めてきた。2021年度は、1.去勢後やARTA投与後に抵抗性獲得したPDXから、確立済みのプロトコールに従い前立腺癌PDX由来オルガノイド専用培地を用いて各CRPCオルガノイドを作成に取り組んだところ、さらなる複数の系統で樹立が認められ、ドラッグスクリーニングへの応用を目指したが、条件検討の段階で十分な細胞数が得られないため実施は難しいとの判断にいたった。一方で、オルガノイドを用いたゲノム解析をすすめることで、もとの前立腺癌との遺伝子発現プロファイルの違いを評価することが可能となり、解析を進めている。
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