予後不良性である552遺伝子の大部分を標的とし、かつ腎癌組織にて最も発現低下しているmiR-124-3p、miR-192-5pに着目した。2020年度は、①データベース解析より得られた候補miRNAが目的通り、予後不良性遺伝子群である552遺伝子を標的とするのか、②間質細胞である線維芽細胞に対する候補miRNAの薬理作用を解析した。 ① 候補miRNAの標的遺伝子解析 腎癌細胞株ACHNに対して、miR-124-3p mimic、miR-192-5p mimicそれぞれをトランスフェクションし、トータルRNAを回収した。得られたトータルRNAを用いてマイクロアレイ解析を行なった結果、データベース解析により予想されていた標的遺伝子138のうち、半数以上の71遺伝子が両miRNA mimicにより発現低下していることが明らかとなった。 ② 線維芽細胞に対する候補miRNAの薬理作用の評価 線維芽細胞Balb/c 3T3細胞に対して、miR-124-3p mimic、miR-192-5p mimicそれぞれをトランスフェクションし、WST-8試薬による増殖アッセイを行なった。その結果、候補miRNAによる線維芽細胞の顕著な増殖抑制作用が明らかとなった。また、TGF-bによって線維芽細胞が癌関連線維芽細胞に分化し、血管新生促進因子VEGFAや癌細胞の浸潤を促進するMMP9の産生が上昇することが報告されている。癌関連線維芽細胞に分化させ、候補miRNA mimicをトランスフェクションし、ウェスタンブロットを行なった。その結果、候補miRNA mimicは癌関連線維芽細胞のVEGFA、MMP9発現を低下させることが明らかとなった。
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