研究課題/領域番号 |
19K18585
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
和田里 章悟 岡山大学, 大学病院, 医員 (80833277)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Diamond-like carbon / スツルバイト / バイオフィルム / キャピラリーフローセル / 尿路留置カテーテル / 尿路感染症 / 尿路結石 |
研究実績の概要 |
本年度の研究計画は、細径カテーテルの内腔にDiamond-like carbon (DLC) コーティングを形成させ、そのバイオフィルム・結石阻害作用の定量的検討を行うことであった。今年度はメタンガスのみで成膜したnormal DLCコーティングについてその性質を重点的に検証した。 現在、尿路留置カテーテルに広く利用されているシリコンを基材として選択し、コーティングを行っていないシリコンを対象としてDLCコーティングを施したシリコンのバイオフィルム・結石阻害作用を以下のように比較した。 バイオフィルムについては、研究計画に記載のキャピラリーフローセルシステムを応用し、チューブ状のシリコンを用いて検証を行った。シリコンチューブの内腔にDLCコーティングを成膜する事により、コーティングをしていないチューブ内腔と比べて約50%のバイオフィルム抑制効果を認める結果を得た。これにより、管の内腔にDLCコーティングが形成されている事とそのコーティングが抗バイオフィルム性を有することが示された。 抗結石性についての検証は12穴ウェルプレート内に円盤状にくり抜いたシリコンとProteus mirabilisを混和した人工感染尿を入れ、数日の振盪培養を行い、析出した結晶を原子吸光分析法により定量することで、比較的検討を行った。臨床上、尿路の結石の析出が多くなる要因である高カルシウム尿症や慢性膀胱炎(細菌の死菌が混ざっている状況)を想定した条件において、DLCコーティングを施したシリコンでは、コーティングをしていないシリコンと比較して、明らかにカルシウム塩やマグネシウム塩のシリコン表面への付着が減少した。 バイオフィルム・結石は尿路留置カテーテル閉塞の主な原因であり、両者に対しての抑制効果をもつDLCコーティングは既存する尿路ステントより優れる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記載のように、DLCコーティングの抗バイオフィルム性と抗結石性の証明がされた。今後、他条件のコーティングを行い、次年度の動物実験にむけて最適なコーティング条件を絞り込んでいく。計画は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
抗バイオフィルム性と抗結石性を有するとともに、生体適合性の面からも有用なコーティングを絞り込むために、臨床応用に向けてIn vitroでの実験を継続する。具体的には、コーティング条件の変更と同時に、より長期間の有効性・コーティングの耐久性の検証が必要である。 また、次年度は、同じコーティングを実際の留置カテーテルに施し、動物実験での検証を予定している。 動物実験で採取した尿路カテーテルについての評価方法も確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年は、コーティング用カテーテル、各ガスの購入等を予算に組み込んでいたが、研究を実施する岡山理科大学先端光学材料部門の協力や、サンプル品の利用、安価なシリコン素材での研究をおこなった事によって、当初の見積額よりも安価に実施することができた。しかし、次年度には、実験継続のための各消耗品や動物に留置する尿路カテーテルの購入費用を要することが判明しているため、当該費用へ支出する予定である。
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