方法・結果 本検討では前立腺癌オルガノイドを用いた癌幹細胞性、転写超保存領域の同定およびその機能解析を目的として解析をおこなった。5症例の前立腺癌オルガノイドと正常前立腺オルガノイドをサンプルに以前に前立腺癌で発現の上昇の報告を認めた26領域のTUCRについてqRT-PCRで発現を解析し、前立腺癌オルガノイドで発現の上昇しているT-UCRを同定した。さらに前立腺癌、非癌部をサンプルに同様にqRT-PCRで解析し、両者で発現の上昇を認めたUc.3+を同定した。Uc.3+についての報告はこれまで全く認められない。前立腺癌細胞株C4-2、22Rv-1を用いて、Uc.3+の強制発現株を作成した。オルガノイドは幹細胞性を維持する環境であり、Uc.3+が幹細胞性に関与すると考え、幹細胞マーカーとしてALDH1、CD44の発現を見たところ、Uc.3+強制発現株において上昇していた。スフェロイドアッセイをおこなったところ、Uc.3+強制発現株においてスフェロイドのサイズが亢進した。これらよりUc.3+が幹細胞性に関与すると考えられた。さらに、薬剤耐性への関与を検討した。Uc.3+強制発現株はドセタキセル、エンザルタミドに対して感受性が不良であった。
まとめ Uc.3+は前立腺癌および前立腺癌オルガノイドで高発現していることをqRT-PCRおよびIn situ hybridizationで確認した。Uc.3+の強制発現では幹細胞マーカーの上昇を認め、薬剤抵抗性が亢進した。現在、オルガノイドを用いてUc.3+の強制発現株を作成しており、細胞株と同様の結果が得られるか検討中である。またUc.3+の下流のシグナルを検討する目的にRNAシークエンスにサンプルを提出中である。
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