研究課題/領域番号 |
19K18588
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
磯野 誠 札幌医科大学, 医学部, 訪問研究員 (00836299)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 膀胱癌 / シスプラチン耐性 / DNA損傷・修復 / ATR阻害薬 |
研究実績の概要 |
進行性膀胱癌に対する治療法は、シスプラチンに対する耐性が重要な問題である。そこで、我々は、シスプラチン耐性の膀胱癌細胞を樹立し、耐性を克服できるような新規治療法の開発を目指して研究を行っている。 膀胱癌細胞において、ゲノムの安定性の制御は、主にDNA損傷チェックポイント機構に依存している。さらに、DNA修復にかかわるチェックポイント経路の中でも特に、ataxia telangiectasia mutant and Rad3-related(ATR)を抑制することで、抗がん剤の作用が膀胱癌細胞において増強されることに着目した研究を行っている。シスプラチン耐性にも、DNA損傷応答が関与していると考えられており、ataxia telangiectasia-mutated and Rad3-related(ATR)はその制御において重要な役割を担うキナーゼである。今回我々は、ATR阻害薬が膀胱癌細胞におけるcisplatin耐性を克服すると仮定し、本研究では、ATR阻害薬がシスプラチン耐性を獲得した膀胱癌細胞に与える抗腫瘍効果を検討するとともに、その分子生物学的メカニズムを検証することを目的としている。 今年度は、まず基礎となるデータ収集のため、当研究室で保有する膀胱癌培養株J82, T24, UMUC3の各親株および各シスプラチン耐性株に対して、シスプラチン単剤投与を行い、細胞周期の観点から耐性メカニズムの探求を行った。また、膀胱癌細胞に対してPARP阻害薬olaparibを用いた実験を行い、その抗腫瘍効果と分子細胞学的なメカニズムを検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の仮説通り、シスプラチン耐性膀胱癌細胞におけるシスプラチンとATR阻害薬AZD6738の併用添加では、in vitroにおいて相乗的な抗腫瘍効果を認めた。そのメカニズムとして、DNA修復チェックポイント経路の阻害・およびアポトーシスの誘導を示すことができた。 また、シスプラチン耐性の背景を調べる目的で、耐性株に対してシスプラチン高用量単剤を添加する実験を行い、細胞周期の変化を調べた。 さらに、次へのステップの予備実験として、PARP阻害剤であるOlaparibを用いて、膀胱癌細胞に対する抗腫瘍効果を調べた。 研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
シスプラチン耐性膀胱癌細胞において、シスプラチンとATR阻害剤AZD6738の併用による抗腫瘍効果のメカニズムをin vitroでさらに掘り下げていく必要がある。また、臨床試験を目指すためには、非がん細胞や動物モデルを用いた実験を行い、抗腫瘍効果以外の副作用を調べる必要がある。また、PARP阻害剤などの、DNA修復・阻害に関する他の薬剤も用いて実験を行うことで治療効果の検証を行う。
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