研究課題/領域番号 |
19K18592
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
守時 良演 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (50595395)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 精子幹細胞 / RNA-sequence |
研究実績の概要 |
[研究I] 停留精巣モデルマウスの作成 一昨年度開発した停留精巣の非開腹手術モデルは、昨年度に入り手術死や精巣の下降率がさらに安定し、成功率がおおむね95%以上となった。一実験で最低3サンプル以上を解析すれば、おおむね安定した結果が得られる計算となった。本モデルは先天的な停留精巣ではないが、マウス生後3週からモデルの作成が可能であり、思春期前の精巣上昇の解析の一助になると考える。また別の意義としては、モデルの安定性から不要なマウスのsacrificeが減り、マウスの取り扱いに関する倫理規定上からも意義があると考えられる。本マウスの解析も参考に、共著者Taiki Katoらにより停留精巣における血液精巣関門の構造学的解析がなされた(Andrology, under review)。今回の報告は主にラットの報告だが、開発したマウスでの解析も今後予定していく。
[研究II]1.TypeB精原細胞、2.マウスES細胞でのRNA-sequence 一昨年度取り組んでいた1細胞RNA-sequenceのcDNAの増幅のばらつきに関しては、既報を参考に種々の方法を試し、下記の方法で培養細胞にて40コピー/細胞以上のmRNAを概ね安定的に増幅できるようになった。具体的には、1) Tomonori Nakamura ら(Nucleic Acids Research, 2015)の方法を参考に、サンプルの冷却をできるだけ厳密に行う。2)チップや手袋の変更などを慎重に行う。3)集中的に増幅の手技を繰り返すことで安定的に手技がこなせるようにする。今後は剪断したcDNAのqualityチェックを行っており、引き続いてRNA-sequenceを委託解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
[研究I] 停留精巣モデルマウスの作成:研究Iにおいては、停留精巣の成功率が安定しないことを修正していた。これまでの修正で手術手技が安定してきたこと、麻酔時間が短くなったこと、手術器具の徹底した洗浄による感染率の低下が、成功率上昇の要因と考えられる。 [研究II]1.TypeB精原細胞、2.マウスES細胞でのRNA-sequence:安定的な微量なRNAの増幅が安定しなかったためである。上述の対策によって手技は安定したため、今sequencingに向けて委託を行う予定である。 [研究III]マウス精巣でのRNA-sequence:マウス精巣の単離を既報に基づいて行ったが、生化学的なdissociationの条件により、細胞のRNAコンディションが大きく異なり、条件の最適化を現在行っている。
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今後の研究の推進方策 |
[研究II]1.TypeB精原細胞、2.マウスES細胞でのRNA-sequence マウスES細胞の培養については、実験室で安定して導入することができた。現在2i-LIFで安定して継代することができている。Dissociationも容易であり、今後既報との比較による手技の再現性を確認する予定である。ひとまずのRNA-sequencingにおいては、金銭的負担の少ないTypeB精原細胞を用いて行う予定である。
[研究III]マウス精巣でのRNA-sequence これまでの既報、Stvant.Iら(Cell Reports 2018)とLukassen.Sら(Science Data 2018)のmethodをまずは試す予定である。物理的なdissociationと生化学的なdissocationの条件検討を行っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
停留精巣の幹細胞ニッチで発現が変化している遺伝子(群)を1細胞レベルで同定し、停留精巣における男性不妊症の原因を究明する研究であるが、初年度は開腹をせずに手術することで停留精巣を得る新しい方法で停留精巣モデル作成をする計画であった。試薬や動物を無駄なく発注したこと、実験助手への謝金が当初の予定より小額となったことから、次年度使用額が発生した。次年度のマウス精巣でのRNA-sequenceに有効に使用したい。
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