研究実績の概要 |
本研究の主目的は間質性膀胱炎の発症に関わる尿路上皮内の転写因子を同定することである。これは、指定難病である間質性膀胱炎の発症メカニズムの解明に貢献し、転写因子を用いた診断方法や遺伝子治療の開発につながる可能性が期待される。 本研究遂行のため、40例の間質性膀胱炎患者の膀胱組織生検を予定し、生検組織を用いた転写因子の絞り込みと、実験動物を用いた機能阻害実験の二段階の研究を策定している。 本年度は研究実施計画に従い、15例の間質性膀胱炎患者より膀胱組織生検(1症例3検体採取)を行い、合計45検体を採取した。随時、定量RT-PCRを進め、先行研究で得られていた82種類の候補転写因子の発現の定量を行った。proof-of-consentとなった先行研究では得られなかった尿路上皮内での転写因子の動態を把握することができた。それにより、候補転写因子の絞り込みが進み、ハンナ型と非ハンナ型間質性膀胱炎で発現量が異なる転写因子が分かってきた。また、京都府立医科大学の研究グループから尿路上皮細胞発生に関わる転写因子についての報告(Inoue Yuta et al. Sci. Rep. Vol.9, 2019)、神戸大学のグループからはiPS細胞から分化誘導した尿路上皮細胞が培養皿上で重層構造を形成する現象の報告(Suzuki et al. Sci. Rep. Vol.9, 2019)が出てきたため、最新の知見を合わせつつ、間質性膀胱炎の発症に関わる転写因子の解明を進めたい。 次年度も引き続き間質性膀胱炎の検体採取を行いつつ、解析の精度を向上させ、効率的に研究を行う。
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