本研究の主目的は、間質性膀胱炎の発症に関わる尿路上皮内の転写因子を同定することである。これは、指定難病である間質性膀胱炎の発症メカニズムの解明に貢献し、転写因子を用いた診断方法や遺伝子治療の開発につながる可能性が期待される。 本研究遂行のため、合計40例の間質性膀胱炎患者(間質性膀胱炎・膀胱痛症候群診断ガイドラインより、非ハンナ型間質性膀胱炎は膀胱痛症候群の表記となったため、本研究には膀胱痛症候群を含む)の膀胱組織生検を予定し、生検組織を用いた転写因子の絞り込みと実験動物を用いた機能阻害実験の二段階の研究を策定していた。 研究実施計画に従い、これまでに34例102検体を採取した。定量RT-PCRを随時行い、その結果を用いて主成分分析を行った。次元削断により得られた第2軸には尿路上皮幹細胞・前駆細胞特異的な転写因子(例えば、TP63は尿路上皮幹細胞のマーカー、FOXA1は膀胱発生に関わる前駆細胞マーカー)、第4軸には尿路上皮内の局在と関係すると考えられる転写因子(例えば、KRTは基底細胞のマーカー、UPKは尿路上皮のマーカー)が含まれていた。この第2軸と第4軸を用いて間質性膀胱炎の病型分類を試みた。教師付き機械学習の決定木を用いて、KRT20、BATF、TP63が間質性膀胱炎のハンナ型のハンナ病変部とその周辺部、非ハンナ型(膀胱痛症候群)を分類する重要な転写因子であることが推察された。 本年度は上記の研究成果を英文誌International Journal of Urologyに投稿し掲載された。当初順調に進捗していたが、コロナ禍の影響で患者の募集と手術の実施が難航するようになった。そのため、研究計画の変更を余儀なくされ、当初計画していた実験動物を用いた機能阻害実験は研究期間中に実施できなかった。
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