研究実績の概要 |
本研究は、ハイスループットな新規RNA detection systemを用いて、腎がん組織におけるlncRNAの臨床的意義を検討し、さらに細胞内局在を定量的に可視化することでlncRNAの働きを解明する事を目的としている。2019年度までで11種類のlncRNAにおいて83症例でquantitative in situ hybridization chain reaction (qHCR)を行っていた。2020年度は引き続きqHCRを行い、16種類で108症例、計1728検体でqHCRを行った。本研究の目的の一つであった従来のISH法と比較した低コスト化、またハイスループットな研究手法としての妥当性は証明されたものと考える。 上記にて得られた結果からlncRNA発現と腎がん予後との関連を解析したところ、HOTAIR, TUG1, DLEU2, GAS5, UCA1, CDKN2B-AS1, HIF1A-AS2の7種のlncRNAにおいて高発現と無再発生存率との関連を認めた。HOTAIR, TUG1, CDKN2B-AS1の3種では高発現と全生存率との関連を認めた。全生存率との関連を認めた3種のlncRNAにおいて、高発現を1点、低発現を0点としてその合計スコアから新たに腎がん予後を予想するリスク分類を提唱した。 細胞内局在を明らかにするため、計画2に示した通りqHCR法と膨張顕微鏡法を組み合わせて実験を行った。核染色、核小体染色を同時に行うことで、目的のlncRNAが細胞内のどこに発現しているのか、ナノスケールで映し出すことができた。膨張することでqHCRの信号をドットで評価でき、細胞内における分布割合を現在評価中である。
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