本研究は、近年技術革新の著しいクロスリアリティ技術を用いて女性泌尿器手術の新規トレーニング法の開発を目的としたものである。特に、盲目的手術であるTVM手術(経腟メッシュ手術)を主眼に置いて研究に着手した。しかしながら、研究開始直後の2019年4月16日に、メッシュ関連合併症を問題視していた米国FDAが経腟メッシュの販売停止を企業に命じたことから、急速かつ世界的に本手術が事実上試行不可能な状態となった。そこで、女性泌尿器手術のうちTVM手術に替わる手術として普及が進んできた腹腔鏡下仙骨膣固定術LSCを主な研究対象に修正し、その新規トレーニング法の開発に着手した。 LSCは腹腔鏡下縫合・結紮を多用する特異な手術である。そこで、まず腹腔鏡下での針把持について方法論を開発し、手技の普遍化を試みた。具体的にはreverseおよびflipと命名した針の制御操作を含めた手技の定形化(4-step loading)を行い、3Dモデルおよびその動画を作製し、評価可能な手技として具体化した。これらを学会、有識者セミナーおよび講演等で公開し、普遍的な手技として評価されたと考えている。 また、手技の可視化の一環として、LSCにおいてメッシュが体内でどのように3次元的に留置されるかを表現した3Dモデルを作成した。既製の女性体および骨盤内臓器の3Dモデルをより分かりやすいものになるよう修正し、実際の手術と同様の形・配置で作成したメッシュの3Dモデルと融合させた。これらをVR空間に描出し、VRゴーグルを用いて医師教育・患者説明に使用する予定である。
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