研究実績の概要 |
前立腺肥大症の標本の評価を、解析ソフトであるMantraを使用して、客観的、定量的に行う。免疫染色については、CD4(ヘルパーT細胞),CD8(細胞傷害性T細胞),CD20(B細胞),MECA-79(高内皮細静脈),CD34(通常の血管),CD16(好中球),CD163(マクロファージ),αSMA(平滑筋)、ナイーブ細胞とエフェクター細胞の分布またはマクロファージのサブタイプ(M1、M2)について検討を行った。 前立腺の組織における炎症細胞、特にリンパ球はB細胞よりもT細胞の方が有意であることが判明し、さらにT細胞のサブタイプを解析すると、ヘルパーT細胞が有意であった。高内皮細静脈については、炎症細胞浸潤が強い症例ほど、前立腺間質内に多く認められ、リンパ球の浸潤の程度と相関を認めた。好中球、マクロファージについては本研究では、他の臨床パラメータなどとの相関を認めなかった。間質のリンパ球の浸潤の程度が強い症例では、下部尿路閉塞が強かった。また、患者の喫煙歴、喫煙期間、禁煙期間と炎症細胞、高内皮細静脈との相関を検討したところ、喫煙歴がある患者において、禁煙期間が長いほど高内皮細静脈の割合が少ないことが分かった。つまり、喫煙患者において、禁煙は前立腺の炎症を改善させる可能性があることが示唆された。生活習慣病、BMIなどとの関連は今回は認められなかった。また、前立腺肥大症の治療薬と炎症との関連を検討したところ、5α還元酵素阻害薬投与により、前立腺の炎症が増悪する可能性が示唆された。今後の研究課題として、炎症の予防・改善に寄与する因子、治療などを追究したいと考えている。
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