研究課題
昨年度の研究結果から、膀胱尿路上皮のumbrella cellに発現しているTLR4は、LPSによって誘導される頻尿に関与していることが示唆された。近年、ATPは排尿反射に重要な役割を果たしている可能性が示唆されている。我々はマウス膀胱にLPSを暴露させたときに、尿路上皮から放出されるATP量を解析した。ウッシングチャンバーを用いて、摘出したマウス膀胱にLPSを暴露させると、膀胱尿路上皮から放出されるATP量は増加し、TLR4のアンタゴニストをLPSに追加投与するとATPの放出量が抑制された。以上より、膀胱内のLPSは尿路上皮に発現するTLR4を介してATPを放出させていることが示唆された。続いてLPSが頻尿をきたすメカニズムを解明するために、膀胱求心性神経の活性化の解析を行った。マウスでは脊髄L6-S1の脊髄神経細胞が膀胱からの神経入力を主に受容しており、排尿反射における膀胱からの求心性入力にも関与していると考えられる。LPS膀胱還流により脊髄L6-S1に発現する神経活動マーカーc-Fosの発現は増加した。ATP受容体(P2X2,P2X3,P2X2/X3)は膀胱求心性神経に発現しているため、ATPがLPSによって誘導されるL6-S1の求心性神経の活性化に関与しているか調べるために、ATP受容体のノックアウトマウス(P2X2 KO, P2X3 KO)を用いて検討した。ATP受容体ノックアウトマウスではc-Fosの発現が有意に抑制された。このことから、ATPはLPSによって誘導されるL6-S1の求心性神経の活性化に重要な役割を果たしていることが示唆された。ATPが膀胱機能に与える影響を調べるために、ATPを膀胱内還流して排尿機能評価を行った。ATP膀胱還流は残尿量を増加させずに頻尿をきたすことが明らかとなった。さらにATP受容体のノックアウトマウスやATPアンタゴニスト(PPADS)を用いて解析したところ、頻尿は有意に抑制された。また、ATP受容体のノックアウトマウスではLPSによって誘導される頻尿も有意に抑制された。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Sci Rep
巻: 10 ページ: -
10.1038/s41598-020-78398-9.