研究実績の概要 |
3種の前立腺癌細胞株(DU145, 22Rv1, LNCaP)を用いてゲノムワイドCRISPRスクリーニングを行った。PARP阻害剤の1つであるOlaparib存在下および非存在下で変異細胞ライブラリーを14日間培養し、生存細胞に含まれるsgRNAの配列を次世代シークエンサーで読み、Olaparib存在下で有意にdrop outする遺伝子を、PARPと合成致死を示す遺伝子の候補として選定した。3種の細胞株それぞれで解析を行った結果、DNA損傷応答に関連する遺伝子群が抽出されたが、PARPと合成致死を示すことが既知である相同組み換え修復に関連する遺伝子(BRCA1,BRCA2,ATMなど)は含まれなかった。得られた候補遺伝子群のうち、複数の細胞株で共通し、前立腺癌組織において一定の頻度で変異の見られるDNA ligase 1(LIG1)に着目した。LIG1はDNA複製や塩基除去修復において機能することが知られている。それぞれの前立腺癌細胞株のLIG1機能をsgRNAにより抑制すると、複数のPARP阻害剤に対する感受性が増強し、スクリーニングの結果が検証された。LIG1抑制がDNA損傷に与える影響をコメットアッセイにより、アポトーシスに与える影響を評価したところ、LIG1抑制のみではDNA損傷の有意な蓄積やアポトーシスの誘導はみられなかった。一方、LIG1抑制下でPARP阻害剤を投与すると、LIG1非抑制下と比較して有意にDNA損傷が蓄積し、アポトーシスが誘導された。
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