最終年度の研究成果はBBN飲水投与発がんモデルでのDDX31発現変化とDDX31遺伝子のノックアウトマウスの作成を試みて凍結胚まで作成したことである。尿路上皮癌の多段階進展機構におけるDDX31の経時的な変化を確認するために、尿路上皮癌発癌モデルの1つであるN-butyl-N-(4-hydroxybutyl)-nitrosamine (BBN)による発癌モデルに着目した。BBNモデルでは上皮内癌から浸潤性膀胱癌と多段階に発癌すること、ヒトの尿路上皮癌と同様にp53変異はDNA binding domain (DBD)におけるミスセンス変異であることが報告されている。今回、BBN飲水開始後、4週ごとに膀胱を摘出し、RNA抽出しDDX31発現をqPCR法で確認した。DDX31は時間依存的に発現上昇し、コントロールでBBN未投与のマウスでは発現上昇がなかった。またDDX31の生理的な機能を理解するためにDDX31のノックアウトマウスを作成するために、CRISPER-Cas9法を用いて凍結胚を作成した。DDX31が発現しない状態でBBN投与による発がんの経過の違いを検討する予定である。本研究では詳細な病態が解明されていない尿路上皮癌で、癌進展において重要なDDX31についての機能解析をすることで今後、新規治療法の確立につながる重要性がある。
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