我々の先行研究によって、PRELID2がcell viabilityやROS産生制御と関連することが示されている。 これまでの研究によって、腎癌細胞株Caki-1をreverse transfection法でsiRNAを用いてPRELID2発現抑制を行い、細胞外フラックスアナライザーXFe24(Agilent Technologies社)を用いた解析の結果、コントロールと比較して基礎呼吸と予備呼吸能が、それぞれ有意に低下することが示された。これらの結果より、PRELID2とミトコンドリア呼吸鎖能との関連が示された。先行研究の結果よりPRELID2とcell viabilityと関連することが示されていることから、PRELID2が治療標的としてのポテンシャルを有することからPRELID2の結合分子の探索を試みた。 我々が樹立したHEK293PRELID2安定発現細胞(HAタグ付き)とHEK293 mock細胞のセルライセートを用いてPRELID2(HA抗体)による共免疫沈降を行った。結合してきたタンパクのショットガンプロテオミクスによる解析を行い、結合分子を探索した。候補分子として既存の文献報告でミトコンドリアにおける細胞内局在をし、ROS産生の制御に関連することが明らかとなっている分子を抽出した結果、分子Xを同定した。PRELID2と分子Xの結合に関しては、HEK293PRELID2安定発現細胞(HAタグ付き)とHEK293 mock細胞のセルライセートを用いて分子Xの抗体による共免疫沈降を行い、ウエスタンブロッティングによってPRELID2と結合していることも確認した。 これまでの研究結果より、腎癌の癌化の過程においてPRELID2と分子XによってROS産生の制御が関わっていることが示唆された。腫瘍の微小環境において細胞は低酸素や飢餓等のストレスにさらされており、生体の微小環境を模倣しうる実験モデルでの更なる検証が必要と考えられた。
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