研究実績の概要 |
本研究において、遺伝性疾患である常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)と結節性硬化症(TSC)について、その生殖細胞系列変異の遺伝子解析を行い、その病態や治療薬効果との関連を検討した。パネル遺伝子検査を行ったのち、コピー数多型解析として、Multiplex ligation- dependent probe assay(MLPA)法で遺伝子のExon単位でのコピー数変化を検出した。ターゲットリシーケンスでカバーできないExon領域は、遺伝子特異的Long PCRを行い、これを鋳型としたダイレクトシーケンスを行った。目標症例数500例に対し、450例の解析が終了した。臨床診断でADPKDと診断されていたが、原因遺伝子が異なる症例がみとめられ、SEC63、OFD1、GANAB遺伝子変異であった。またPKD変異の症例において、PKD2変異が全体の26.7%を占め、約15%とするこれまでの報告に比べ割合が高かった。PKD2遺伝子変異はPKD1に比べ進行の速度が緩やかであると知られているが、PKD1 truncated変異でも進行が遅いケースや、PKD2 non truncated変異でも40代で腎代替療法のケースもあり、何らかの修復遺伝子や、病状悪化につながる原因の存在が示唆された。 TSC、ADPKDの隣接遺伝子症候群は4家系6例にみとめられ、すべての症例でTSC2,PKD1にまたがる欠失を認めた。隣接遺伝子症候群の場合はADPKDの病態が優位で、腎機能障害が早期出に出現することが知られているが、いずれの症例もTSCの症状が非常に優位であった。TSCは腎嚢胞を伴うことがあることからも、TSCとしか診断されていない隣接遺伝子症候群の患者がいる可能性が考えられた。これらのことから、ADPKD,TSCにおいて、臨床上遺伝子検査を行うメリットが非常に大きいことが示唆された。
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