男性不妊症の多くは特発性の精子形成障害であり、様々な環境化学物質や薬物の曝露が男性生殖器系に悪影響を与え、男性不妊の潜在的な原因として関与していることが広く考えられている。アルコールとニコチンは我々の生活環境に広く根付いている物質であり、生殖毒性との関連性が検討されてきたが、同時曝露による精巣内微細環境の変化や精子形成障害の機序についての詳細な報告はいまだない。 2021年度においては、前年度同様の4週齢のDBA/2系マウスを用い、①正常群、②アルコール群、③ニコチン群、④アルコール+ニコチン(同時曝露)群の4群を作成し、精巣の薬物代謝時における酸化ストレスの影響を組織学的・分子学的解析を用いて検討した。 結果として正常群に比べアルコール群・ニコチン群および同時曝露群では抗酸化・炎症関連酵素(Ho-1、SOD、GSTなど)が上昇し、酸化ストレスに対して抗酸化活性および細胞保護作用が働いていることが認められた。特に、同時曝露群においては単独投与群(アルコール群・ニコチン群)に比べ有意に発現が上昇していた(P<0.05)。また、これらの抗酸化因子は、精細管内の生殖細胞(精原細胞、精母細胞など)では変化は認められなかったが、間質のライディッヒ細胞において強く発現していた。精巣内に存在する薬物代謝酵素(ADHやcytochrome P450など)のmRNA発現も上昇していたことから代謝によって発生する活性酸素がライディッヒ細胞に影響し精子形成に影響を及ぼす可能性が示唆された
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