研究実績の概要 |
2020年度は研究代表者の異動により、対象症例を埼玉医科大学総合医療センターにて免疫チェックポイント阻害薬治療を受けた腎細胞癌症例に変更した。埼玉医科大学総合医療センターにて進行腎細胞癌の診断でイピリムマブ・ニボルマブ併用療法を行った16例の治療前腫瘍組織検体(手術検体もしくは生検検体)に対して、多重免疫染色解析システムを用いて腫瘍微小環境 (CD4, CD8, CD204, PD-1, PD-L1, CA9, DAPI)を評価し、臨床データと比較した。対象症例を、最良総合効果により奏功群 (CR+PR: n =10)と非奏功群 (SD+PD: n =6)に分け、腫瘍内免疫細胞密度 (CD4陽性リンパ球、 CD8陽性リンパ球、 CD204陽性細胞 [M2マクロファージ])、腫瘍細胞におけるPD-L1陽性率、腫瘍浸潤M2マクロファージにおけるPD-L1陽性率を比較したが、いずれも両群に有意差は認めなかった。さらに、治療前の血液データにおける炎症系マーカー(好中球/リンパ球比 [NLR]、リンパ球/単球比 [LMR]、血小板/リンパ球比 [PLR]、C反応性蛋白 [CRP])と、免疫染色の結果を比較検討したところ、血液中のNLRと腫瘍細胞中のPD-L1陽性率の間に相関を認めた (相関係数 =0.570, p <0.001)。腫瘍細胞中のPD-L1発現は免疫抑制性の腫瘍微小環境を反映していることが考えられ、さらに血液中のNLRと相関を認めることから、腎細胞癌症例において、NLRは免疫抑制性の腫瘍微小環境を反映していることが示唆された。
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