進行腎細胞癌において、免疫チェックポイント阻害薬の治療効果を予測するバイオマーカーは確立されていない。その原因として、従来の免疫組織染色では、①評価者の主観性が排除できない、②複数のマーカーを同時に解析できない、ことなどが考えられる。本研究では、多重免疫組織染色解析システムおよび臨床データを用いて、腎細胞癌における治療効果予測モデルを構築することを目的とした。埼玉医科大学総合医療センターにおいて進行腎細胞癌の診断にて、ニボルマブ・イピリムマブ併用療法を施行した19例を解析対象とした。19例のうち、16例のニボルマブ・イピリムマブ 併用療法開始前手術検体もしくは生検検体に多重免疫組織染色解析システムを用いて、各細胞密度 (CD3+CD4+細胞、CD3+CD8+細胞、CD204+細胞、CD4+Foxp3High細胞、CD4+CTLA4+細胞、CD8+CTLA4+細胞、CD4+Ki67+細胞、CD8+Ki67+細胞)および腫瘍におけるPD-L1陽性率、CD204+細胞におけるPD-L1陽性率、腫瘍におけるKi67陽性率を評価し、無増悪生存期間、全生存期間 と比較検討した。また、最良総合効果により奏効群 (CR、PR、 Long SD)と非奏効群 (Short SD、PD)に分け、治療開始前、治療開始3週間後、6週間後の血液検査結果(NLR、LMR、PLR、CRP)を比較した。本研究において、多重免疫組織染色解析システムによる解析からは、ニボルマブ・イピリムマブ併用療法の治療効果を予測する因子は同定されなかった。臨床データの解析から、NLR、LMR、PLR、CRPは、いずれも治療開始時点での治療効果予測因子となり、さらに、CRPは治療開始後の治療効果予測に有用であることが見出された。
|