研究課題/領域番号 |
19K18626
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
近藤 亜希子 東北大学, 医学系研究科, 大学院非常勤講師 (20644818)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 性分化疾患 / DSD / 性分化関連遺伝子 / 塩基配列変異 / バリアント / 東北メディカル・メガバンク計画 / 全ゲノム解析 / 住民ゲノム参照パネル |
研究実績の概要 |
令和2年度は東北メディカル・メガバンク機構において8380人のゲノム参照パネル(8.3KJPN)が構築され、ゲノム参照パネルが更新された。これに伴い、日本人における性分化関連遺伝子の塩基配列変異(バリアント)の検出、アノテーションと注釈付けを8.3KJPNにおいて再構築しなおした。 研究成果を以下に示す。8.3KJPNにおける常染色体劣性遺伝形式の32の性分化関連遺伝子を抽出し遺伝子バリアントを検出した。8.3KJPNにおける32の性分化関連遺伝子のバリアント総数は46210であった。既知の遺伝子バリアントの情報源として世界的に最大規模のClinVar、the Human Gene Mutation Database、InterVarを用いて頻度情報の注釈付けを行った。病的意義が示唆されたバリアントは24遺伝子において92あり、残りの8遺伝子において病的バリアントは認めなかった。2つのバリアントをもつ個体が12個体あった。さらに92バリアント中30バリアントで新規遺伝子バリアントが検出された。 各DSDの遺伝子バリアントの浸透率が100%と想定した場合、推定保因者頻度は0.06であり、約16.5人に1人が何等かの、本研究で対象とした遺伝子の病的バリアントを保有している推定となった。新生児マススクリーニングにて既知の日本人疾患頻度がわかっている疾患として21水酸化酵素欠損症がある。こちらについて本研究の結果から推定した疾患頻度と既知疾患頻度を比較すると、ほぼ同等の結果となり、本研究方法が適正であることを裏付けた。疾患頻度がわかっていない疾患について本研究から疾患頻度を推定できることに意義がある。さらに新たに同定された新規遺伝子バリアントは診断確定に至っていない症例の今後の確定診断に大変有用な情報となる。今後は保因者の表現型と遺伝子バリアントの関連性を調査していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度は令和元年度に引き続き、日本人における性染色体異常に伴うDSDの発生頻度と性分化関連遺伝子バリアントの頻度を調査し、さらに既知および新規バリアントを保有する個体の表現型を調査し、その関連性を検証する計画であった。 東北メディカル・メガバンク機構において8.3KJPNへゲノム参照パネルが更新され、これに伴い、性染色体異常に伴うDSDの発生頻度と性分化関連遺伝子バリアントの頻度調査を8.3KJPNにおいて再構築しなおした。具体的には、8.3KJPNにおいて、①性染色体のゲノム変異を検出し性染色体異常に伴う DSDの発生頻度を解明すること、②性分化関連遺伝子バリアントの頻度を調査することである。①については3.5KJPNv2同様、8.3KJPNにおいても性染色体のゲノム変異を検出しなかった。よって性染色体異常に伴うDSDの発生頻度は検討できなかった。疾患推定頻度からターナー症候群やクラインフェルター症候群の検出が予想されたが、健常人を対象としており合併症などから上記疾患は除外された可能性がある。②については令和元年度同様、32の性分化関連遺伝子について8.3KJPNで再検討しなおして結果を得た。また、既知および新規バリアントを保有する個体の表現型を調査しその関連性を検証する計画については、8.3KJPNの性分化関連遺伝子バリアントの頻度調査の再検討の課題に時間を要し、本年度は遂行できなかった。ただし、東北メディカル・メガバンク計画における試料・情報の供与目的のバイオバンク試料・情報分譲依頼申請はすでに受理されているため研究準備は整っている。令和3年度に計画を実行したい。 以上より、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は既知および新規バリアントを保有する個体の表現型を調査し、その関連性を検証する計画である。東北メディカル・メガバンク計画の試料・情報の供与を受けるため、バイオバンク試料・情報分譲依頼申請を行い受理された。予定通り研究計画をすすめていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額である。 令和3年度と合わせて、令和3年度に計画している、病的バリアント保有個体の表現型調査の検証、学会発表、論文作成等に使用する予定である。
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