研究実績の概要 |
本年度は、まず精子エピゲノムを可視化するために免疫染色により精子頭部に存在するヒストンタンパク質およびそのメチル化修飾を検出することを試みた。マウス精巣上体尾部より成熟精子を絞り出し、細胞数を計測した後に一定細胞数をスライドグラス上に塗抹し乾燥させた。この塗抹標本を用いてヒストンH3の免疫染色をおこなったところ、特異的な染色は確認されなかった。精子頭部はプロタミンによって高度に凝縮しており、これによって通常の細胞透過処理程度では抗体が内部に浸透しないことが考えられたため、マウス精子を脱凝集した後に免疫染色をおこなう実験条件を検討した。そこで先行研究(Yoshida et al., 2018; Yamaguchi et al., 2018)で用いられている実験条件を参考に、先に精子を脱凝縮させた後に塗抹標本を作製する方法および塗抹標本を作製した後に脱凝縮をおこなう方法の2つの実験手順を試し、免疫染色への影響を比較した。その結果、どちらの実験手順でもヒストンH3を検出することができたが、様々なH3メチル化修飾に対する免疫染色では塗抹標本の方がより多くの抗体について染色を確認することができた。また、脱凝縮後の形状については先に脱凝縮する手順のほうが良く保たれており、実験手順に一長一短あることが分かった。そこで現在精子の形状が保たれつつより多くのヒストン修飾を検出できるような実験条件を検討している。また、本年度は精子の免疫蛍光染色像から精子エピゲノム多様性の解析をおこなうために、深層学習を主とする機械学習手法の開発・実装に着手した。
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