転写因子STAT3は子宮において発現し、胚着床に不可欠であることが知られる。本研究では、胚着床における子宮内膜上皮および間質のSTAT3の役割を調べた。子宮内膜上皮、子宮内膜間質、子宮全体のStat3欠損マウスとして、Stat3-floxed/Ltf-iCre(Stat3-eKO)、Stat3-floxed/Amhr2-Cre(Stat3-sKO)、およびStat3-floxed/Pgr-Cre(Stat3-uKO)マウスを作成した。Stat3-eKOマウスおよびStat3-sKOマウスは、子宮内膜への胚接着がなく着床障害をきたした。この結果、子宮内膜上皮および間質の両方のSTAT3が胚接着に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。Stat3-eKOマウスの子宮は子宮管腔が入り組んだ構造を示し、着床期に起こる子宮管腔のスリット化が起こらなかったことから、子宮内膜上皮のSTAT3は子宮管腔の形成に関わっていることが示された。一方Stat3-sKOマウスの子宮は、着床期の子宮における子宮内膜上皮のエストロゲン応答能亢進と持続的な細胞増殖を示し、子宮内膜の胚受容能における間質STAT3の役割が示唆された。さらに、Stat3-uKOマウスは、持続的な子宮内膜上皮の増殖という特徴だけでなく、子宮管腔形態異常という特徴も持っていた。これらの結果から、子宮内膜上皮のSTAT3は着床期の子宮管腔のスリット状形態変化を制御し、子宮内膜間質のSTAT3は上皮のエストロゲン応答能と細胞増殖能を抑制することが示された。本研究により、子宮内膜上皮および間質のSTAT3が異なる経路を介して子宮の胚受容能を調節していることが示された。
|