計23症例の摘出子宮よりマルチサンプリングを行いOCTコンパウンドで包埋した凍結標本を作製した。子宮腺筋症上皮組織44サンプル、子宮腺筋症間質組織13サンプル、正常子宮内膜組織57サンプルに対しレーザーマイクロダイセクション(LMD)による組織特異的サンプリングを行い、DNAを抽出した。上記23症例の血液から得られたDNAを正常コントロールとして解析に使用した。先行研究(Suda et al. Cell Reports. 2018)にて設計した76遺伝子のターゲットプローブを用いて上記子宮腺筋症44サンプル、子宮腺筋症間質13サンプル、正常 子宮内膜57サンプル、血液23サンプルから得たDNAに対しターゲットシーケンスを施行した。平均デプスは254(±45.2)、シーケンス領域における20リード以上のカバー率は99.8%であった。体細胞変異の解析は血液から得たDNAのシーケンスデータをリファレンスとした。子宮腺筋症組織で変異を認めた代表的な遺伝子(サンプルにおける頻度、症例あたりの頻度、平均変異アリル頻度)はKRAS(34%、35%、0.38)、ARID1A(20%、30%、0.24)、ARHGAP35(16%、22%、0.19)、PIK3CA(11%、13%、0.37)であった。正常子宮内膜組織で変異を認めた代表的な遺伝子はPIK3CA(68%、91%、0.10)、ARHGAP35(60%、91%、0.09)、KRAS(53%、74%、0.17)、PPP2R1A(28%、48%、0.07)であった。23症例のうち3症例で子宮腺筋症と子宮内膜間でKRAS変異が共有されていた。先行研究のデータも合わせると子宮腺筋症が存在する子宮内膜でKRAS、PIK3CA変異を多く認められるという結果であった。現在サンプルを絞って全ゲノムシークエンスとRNAシークエンス実験を進めている。
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